振り返り 産業保健師の日常

産業保健師による保健指導のポイント【健診事後措置】

2019-04-26

こんにちは。

同じように企業で保健師をされている方や保健指導をするために企業へ出向く方がいると思いますが、経験が少ない方は、「どのように保健指導をすれば良いのかわからない」というように、保健指導で悩むことはありませんか?

本記事では、保健指導に関して、その内容や目的、方法についてお伝えします。

 

保健指導と言っても、行うことは「指導」というよりも「サポート」「支援」と言ったニュアンスに近いと思います。

強制的に何かをしてもらうというよりも、必要性を説明して自ら動けるように促し、健康をサポートするようなイメージです。

具体的な話をしないとわかりづらいと思いますので、保健指導までの流れも含め、実際に私が行なっているケースで説明していきます。

 

保健指導の対象者の選定

対象者は健診結果に基づき選定していきます。

健診に関する業務はコチラでお伝えしていますので、ご参考まで。

対象者の選定については、弊社の場合は基本的に産業医が判断しています。

従業員に対して産業医が保健指導をすべきか、保健師が保健指導をすべきか、もしくは必要無いかを決めていきます。

もちろん保健師である私もその選定結果を確認し、必要に応じて産業医へ相談しながら進めています。

 

「産業医」による保健指導と「保健師」による保健指導

判定のうち「要観察」「要精査」「要受診」「要治療継続」が有所見者(何らかの異常がある人)となります。

 

産業医による保健指導

検査結果によりますが、基本的に「要受診」「要精査」などの医療機関の受診が早めに必要と考えられる人に対しては、産業医による面談の中で受診や再検査の勧奨が行われます。

つまり、このままだと病気になる可能性が高い人に対しては、産業医から保健指導が行われます。

 

保健師による保健指導

そして、保健師が対象とするのは、再検査や受診を早急に行う必要性が低く、まずは生活習慣を改善するところからでも遅くはないような人になります。

すぐに受診をする必要は無いが、経年の経過や傾向、生活習慣(喫煙・飲酒状況など)から、このままのスタイルで生活を送ると何らかの疾患に罹患するリスクが高い人に対し、生活の中で改善できることをアドバイスしていきます。

ちなみに、健診判定だけではなく、急激な体重の増減がある人とも面談をして、増減の要因についてお話を伺うこともあります。

身体だけでなく精神的な要因から身体変化が現れている場合もあるので、保健指導という名目から面談をし、メンタル不調が無いかどうかも確認していくことがあります。

 

保健指導の目的や実施内容

対象者の健康状態や生活状況によって目的は様々ですが、基本的な目的としては、対象者が健康を維持しその人らしい生活が送れるように、問題なく就業できるように支援することです。

そして、最終的には、対象者が自分自身で自分の身体の調整を行うことができるように支援をします。

 

結果票の見方と結果の説明を最初に行う

保健指導の際、必ず行うことは、結果票の見方の説明と、結果判定に関する説明です。

これは健診結果の判定に関わらず、そして保健指導の実施者が産業医・保健師に関わらず、行います。

何度も同じ機関で健診を受けていれば結果の見方や判定に慣れているかもしれませんが、毎回違う場所で受診をしていたり、初めての受診の場合には、見方がわからないことがあります。

健診は先々までずっと受診するものになりますので、自分でも毎回確認ができるよう、見方や内容に関して説明を行います。

健康診断は受診することで終わりではなく、結果を確認し、それを自分自身の生活改善に役立て健康維持に繋げることが重要です。

大抵の人は健康診断の受診が大きな目標となり、結果については少し確認して終了となる場合が多いので、結果の確認とその結果が示している事実についての説明が必要です。

 

治療中の人に対する保健指導

治療開始している人に対しては、受診先や頻度、薬剤使用の確認を行います。

受診しているにも関わらず検査結果が良くない場合には、健診結果を受診先へ持参し、主治医より治療の調整を行なっていただく必要があります。

受診していてデータのコントロールが良好の場合には、特に問題がないため、引き続き受診を行うよう伝えます。

よくあるケースとしては、「出張が長引いて薬をもらいに行けなかった」とか、「コレステロールの薬をもらっているけど採血のフォローが無い」とか。

つまり、「治療中」と言いながらも受診や内服がきちんとできていなかったり、受診先での採血フォローが乏しかったりと、しっかりとした治療を受けられていないケースがあるということです。

「治療中」と言っても中身は様々ですので、その実際の状況を伺い、きちんと治療ができているかどうかを確認することが重要です。

 

再検査対象者への勧奨

再検査については、受診させなければならない訳ではありませんので、あくまで「勧奨」を行います。

検査結果から再検査の必要性をお伝えし、その上で再検査を受けた方が良いことを勧奨する場合があります。

結果によって、できるだけ早めに再検査を受診すべきなのか、それとも半年後で良いのか、もしくは来年まで経過を見ても大丈夫なのかも判断しながらお伝えすることになります。

弊社では会社で健康診断を受けることができ、二次検査も同様に会社で受診ができます。

そのため、二次検査対象者には通知が送付され、それにより勧奨が行われていることになります。

保健師による保健指導対象者には、面談のタイミングにもよりますが、保健師から再検査対象であることをお伝えしています。

ただし会社で一次健診を受診できていないケースや二次検査の日に受診できない場合には、他院で再検査をする必要が出てきますので、そういった場合には、再検査や受診の勧奨は産業医から行なっていただき、必要に応じて病院への紹介状を発行しています。

 

生活習慣の改善に向けて

健診結果判定がどのような人であっても、生活習慣を正すことは必要です。

保健指導では有所見者を中心に面談を行いますので、何かしらの所見がある人に対し、生活に関するアドバイスを行います。

その中で、既往歴や家族歴、ライフスタイルや仕事内容・仕事状況など、対象者の生活や疾患要素の関わる様々な点について情報収集を行います。

健診結果に複数の所見があった場合、それら全ての項目について説明を行いますし、まだ判定が悪くなくてもこれまでの傾向から今後悪くなる可能性があるものについてもお伝えしていきます。

もちろん、対象者からの疑問・質問にも同時に答えていきます。

この保健指導では、所見がある項目に関して、対象者の生活習慣の何が原因で所見となって現れているのかを考えていく必要があり、また、何を改善すれば所見が改善するのかをアセスメントし、伝えていきます。

また、現状にある生活スタイルを継続した場合、今後数値がどのように変化をし、身体にどのようなリスクが生じ流のかも説明し、生活習慣を見直し改善できるよう、きっかけづくりを行います。

 

保健指導は健康への意識づけの場

健診の判定が何であれ、全ての人は加齢とともに機能低下を来たし、何らかの障害が出てきます。

でもそのスピードは個人差があり、生活習慣にも大きく左右されるものです。

仕事で多忙な従業員が、自分の健康に目を向け、健康を意識した生活を送ることができるようになる前には、かなりの時間がかかります。

疾患を発症していれば健康に気をつけようと思える場合が多いですが、そうでは無い場合、「予防」行動への配慮は、簡単にできるものではありません。

医療従事者は健康への意識が高いですが、一般の人はそうでは無いのです。

そういった人々を相手にして保健指導を行うのは容易ではありませんが、まずは健康に向けて一歩踏み出してもらうために、保健指導という場で、動機付け、きっかけづくりを行うというのが、この保健指導だと感じています。

最終的には、従業員自らが自身の健康問題に対して自分で解決方法を考えながら生活をしていくことを目標にしますが、そこまでできるケースはとても少ないですので、彼らの健康を陰ながら支えて行けるよう、少しずつアプローチを行なっていきましょう。

 

補足:健康への取り組みとして、様々なアプローチ方法があります

今回は「健康診断の事後措置」としての保健指導についてお伝えしましたが、健康への取り組みとしては面談といった個々へのアプローチだけでなく、様々な方法でアプローチが可能です。

集団に対する健康教育や、ポスターの掲示、健康だよりの配布など、他の方法を取り入れながら保健指導の相乗効果を図ることも可能だと思います。

事後措置として個々へのアプローチは必要ですが、何度も個々へアプローチできる訳ではありませんので、様々な方法を取り入れながら継続的に働きかけることができると、効果をより高めることができるでしょう。

 

最後に

今回は弊社のケースでお伝えしましたが、保健指導の対象者選定から実施までは、企業によって方法が様々です。

記録の残し方にも差がありますし、事後措置を手紙やメール、電話で行うケースもあるでしょう。

もちろん、健診結果や保健指導は個人情報に関わることですので、取り扱いにも気をつける必要があります。

ただ、保健指導の目的は大きく変わらないと思いますので、上記ケースを参考にしていただき、その企業の特徴や個々に合った方法でアプローチできれば良いと思います。

 

厚労省HPも参考に

厚労省よりマニュアルが出ていますので、参考にしてみてください。

保健指導

標準的な健診・保健指導プログラム(H30年度版)