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第13次労働災害防止計画のポイントまとめ【産業保健と国の施策】

2019-03-30

 

13次労働災害防止計画ってなんだろう

 

本記事では、「第13次労働災害防止計画」についてお話します。産業保健に携わる者としては把握しておくべき、国の施策です。

簡単にまとめると、以下のようになります。

 

第13次労働災害防止計画

・労働安全衛生法に基づく、長期的展望での施策。

・計画期間は2018年4月~2023年3月31日。

・労働災害(特に死亡・死傷災害)を減少させることが目的。

 

13次労働災害防止計画が目指すもの

 

労働災害を少しでも減らし、安心して健康に働くことができる職場の実現を目指して策定されたものです。

そして以下の様な社会の実現を目指しています。

 

・正規・非正規といった雇用形態の違いや副業・兼業、個人請負といった働き方の違いに関わらず安全や健康を確保する

・就業構造の変化等に対応し、高年齢労働者、非正規雇用労働者、外国人労働者、障害者である労働者の安全と健康を確保する

 

 

計画期間:2023年までの5年間

 

20184月~2023331日(5年間)

 

計画の全体目標:労災件数の減少

 

国、事業者、労働者等の関係者が一体となり、一人の被害者も出さないことを目標にします。

つまり、一人の被災者も出さないという基本理念の下、働く方々の一人一人がより良い将来の展望を持ち得るような社会を目指しています。

 

目標

死亡災害:15%以上減少(2017年比)

死傷災害(休業4日以上の労働災害):5%以上減少(2017年比)

 

計画の業種別目標

 

・建設業、製造業及び林業

  死亡者:15%以上減少(2017年比

 

・陸上貨物運送事業、小売業、社会福祉施設及び飲食店

  死傷者:5%以上減少(2017年比)

 

・その他の目標

1)仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合:90%以上(71.2%:2016年)

2)メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合:80%以上(56.6%:2016年)

3)ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合:60%以上(37.1%:2016年)

4)化学品の分類及び表示に関する世界調和システム(GHS)による分類の結果、危険性又は有害性等を有するとされる全ての化学物質について、ラベル表示と安全データシート(SDS)の交付を行っている化学物質譲渡・提供者の割合:80%以上(ラベル表示60.0%、SDS交付51.6%:2016

5)第三次産業及び陸上貨物運送事業の腰痛による死傷者数:5%以上減少(2017年比)

6)職場での熱中症による死亡者数:5%以上減少(20132017年の5年間と比較して)

 

8つの重点事項と具体的な取り組み

 

 

8つの重点事項

1)死亡災害の撲滅を目指した対策の推進

2)過労死等の防止等の労働者の健康確保対策の推進

3)就業構造の変化及び働き方の多様化に対応した対策の推進

4)疾病を抱える労働者の健康確保対策の推進

5)化学物質等による健康障害防止対策の推進

6)企業・業界単位での安全衛生の取組の強化

7)安全衛生管理組織の強化及び人材育成の推進

8)国民全体の安全・健康意識の高揚等

 

これら8つの事項について、それぞれの具体的な施策を挙げていきます。

 

1)死亡災害の撲滅を目指した対策の推進

 

業種別・災害種別の重点対策の実施

 ①建設業における墜落・転落災害等の防止

 ②製造業における施設、設備、機械等に起因する災害等の防止

 ③林業における伐木等作業の安全対策 等

   重篤な災害の防止対策

   最新基準が適用されていない既存の機械等の更新促進 

 

(背景)

製造業や建設業は労働災害の発生率が高いため、引き続き重点業種として取り組む必要がある。

強度率の高さを考慮し、林業も重点業種に追加された。

 

2)過労死等の防止等の労働者の健康確保対策の推進

 

労働者の健康確保対策の強化

 ①企業における健康確保措置の推進

 ②産業医・産業保健機能の強化

過重労働による健康障害防止対策の推進

職場におけるメンタルヘルス対策等の推進

 ①メンタルヘルス不調の予防

 ②パワーハラスメント対策の推進

雇用形態の違いにかかわらない安全衛生の推進

副業・兼業、テレワークへの対応

過労死等の実態解明と防止対策に関する研究の実施

 

(背景)

・ストレスを感じている労働者は全労働者の半数を超えている。

・労災認定された過労死は700件台で推移、死亡または自殺(未遂含む)は200件前後。

 

3)就業構造の変化及び働き方の多様化に対応した対策の推進

 

災害の件数が増加傾向にある又は減少がみられない業種等への対応

 ①第三次産業対策

第一次産業 農業・林業・漁業
第二次産業 鉱業・建設業・製造業

第三次産業(全体の75%はコレ)

電気・ガス・水道・運輸・通信・小売・卸売・飲食・金融・保険・不動産・サービス・公務・その他の産業

 ②陸上貨物運送事業対策

 ③転倒災害の防止

 ④腰痛の予防

 ⑤熱中症の予防

 ⑥交通労働災害対策

 ⑦職場における「危険の見える化」の推進

高年齢労働者、非正規雇用労働者、外国人労働者及び障害者である労働者の労働災害の防止

 ①高年齢労働者対策

 ②非正規雇用労働者対策

 ③外国人労働者、技能実習生対策

 ④障害者である労働者対策

個人請負等の労働者の範疇に入らない者への対応

技術革新への対応

 

4)疾病を抱える労働者の健康確保対策の推進

 

企業における健康確保対策の推進、企業と医療機関の連携の促進

疾病を抱える労働者を支援する仕組みづくり

脊髄に損傷を負った労働者等の職場復帰支援

 

(背景)

・脳・心疾患につながるリスクのある血圧、血糖、脂質等を含めた健診結果有所見率は全労働者の半数を超え、また、年々増加している。

・健診結果に基づく就業上の措置を的確に実施するとともに、労働者の治療と職業生活の両立支援に取り組む企業に対する支援を推進することが必要。

 

5)化学物質等による健康障害防止対策の推進

 

化学物質による健康障害防止対策

 ①国際動向等を踏まえた化学物質による健康障害防止対策

 ②リスクアセスメントの結果を踏まえた作業等の改善

 ③化学物質の有害性情報の的確な把握

 ④有害性情報等に基づく化学物質の有害性評価と対応の加速

 ⑤遅発性の健康障害の把握

 ⑥化学物質を取り扱う労働者への安全衛生教育の充実

石綿による健康障害防止対策

 ①解体等作業における石綿ばく露防止

 ②労働者による石綿等の化学物質の取扱履歴等の記録の保存

受動喫煙防止対策

電離放射線による健康障害防止対策

粉じん障害防止対策

 

(背景)

・産業現場で使用される化学物質は約70000種類、毎年1000物質程度の新規化合物の届け出がなされている。これらうち労働安全衛生関係法令によって、ばく露防止措置、作業環境測定、特殊健康診断、ラベル表示、リスクアセスメント等の実施が義務付けられているものは663物質。その他多くの化学物質については、対策の基本となる危険性や有害性等の情報の通知さえ十分行われているとはいえない状況。

・国内の石綿使用建築物の耐用年数から推計した解体棟数が、2017年の約6万棟から、2030年頃のピーク時には約10万棟まで増加する。

 

6)企業・業界単位での安全衛生の取組の強化

 

企業のマネジメントへの安全衛生の取込み

労働安全衛生マネジメントシステムの普及と活用

企業単位での安全衛生管理体制の推進

企業における健康確保措置の推進

業界団体内の体制整備の促進

元方事業者等による健康確保対策の推進

業所管官庁との連携の強化

中小規模事業場への支援

民間検査機関等の活用の促進

 

7)安全衛生管理組織の強化及び人材育成の推進

 

安全衛生専門人材の育成

労働安全・労働衛生コンサルタント等の事業場外の専門人材の活用 等

 

8)国民全体の安全・健康意識の高揚等

 

高校、大学等と連携した安全衛生教育の実施

危険体感教育及び震災に備えた対策の推進

2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を活用した健康促進

技能検定試験の関係団体との連携

科学的根拠、国際動向を踏まえた施策推進

 

最後に

 

近年は労働災害が多少減少してはいるものの、まだ多いです。

高齢化もあり、今後はこれまでのような減少は見込めないため、労働災害に対してこれまでとは異なる切り口や視点での対策が求められています。

また、過労死やメンタルヘルス不調への対策、治療と仕事の両立支援への取組の推進も求められていること、化学物質による健康障害の防止やその他の対策強化も必要とされています。

大規模な自然災害による被害からの復旧支援や原発廃炉作業の安全衛生確保を充実させる必要があること、そして2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に、国全体の安全や健康意識の底上げにつなげていきたい、こういったねらいがあります。

各事業所でもできるところからひとつずつ、要点を押さえて活動計画を立てていきましょう。

 

参考・引用

厚生労働省「第13次労働災害防止計画について