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産業保健師の役割や業務内容について

2019-03-28

 

私は元看護師で、今は産業保健師です。

それぞれを簡単に比較しながら、産業保健師という職業に関する疑問にお答えします。

 

ここでは以下の疑問にお答えします。

 1)産業保健師とはどのような職業なのか

 2)産業保健師の役割は何か

 3)産業保健師の仕事内容は何か

 

結論

1)企業で従業員の健康管理全般を行います

2)医療職だけでなく人事や総務と連携をしながら従業員の健康維持増進に取り組みます

3)従業員の身体的・精神的健康のためにあらゆるサポートをします

 

では、詳細についてお話ししますね。

 

1)産業保健師とはどのような職業か

 

 

看護師が医師の診療の補助や病気の人のサポートをするのに対し、保健師は病気の予防・健康管理を行います。

保健師には勤務場所で3種類に分けられます。

 

 産業保健師:企業

 行政保健師:都道府県庁、市区町村、保健所、保健センター

 学校保健師:学校

 

つまり、産業保健師は企業で仕事をしており、その企業に勤める人々(従業員)の病気を予防するために活動しています。

ちなみに、産業保健師の活動の対象となるのはその企業の従業員ですが、行政保健師の対象はその地域の管轄となる住民です。

また、学校保健師の対象はその学校の教職員と生徒になります。

 

2)産業保健師の役割とは

 

産業保健師は、一般的には総務部や人事部に所属します。

企業の中での保健活動ですので、会社組織として活動を行うことになります。

これが病院との大きな違いです。

 

病院は医師と看護師等コメディカルが連携をして患者の治療に当たりますが、企業では会社の産業保健スタッフが関係各所と連携をして全従業員の健康管理に努めます。

 

 産業保健スタッフ:産業医、産業保健師、事務など

 関係各所:総務部、人事部など

 

よって、看護師と比べると、より広範囲の人々と連携を図りながら業務を遂行していく必要があります

これ、とても重要です。

 

3)産業保健師の仕事内容は何か

 

企業内で従業員の病気を予防するためには、健康の維持、向上、改善が必要です。

仕事内容としては、従業員の健康管理全般になります。

 

ここで言う『健康』とは、『身体的健康』と『精神的健康』の両方です。

心身ともに健康であってはじめて人は健康と言えます。

 

私たち医療職が従業員に対して行うことと具体例としては、以下のようなものがあります。

  • 健康状態の確認→健康診断、ストレスチェックなど

  • 健康状態の維持・向上・改善方法の提案→健康診断結果の確認とフォローアップなど

  • 疾病の早期発見、医療機関の紹介→健康相談対応、紹介状の作成

  • 知識の普及→健康教育・セミナー開催

  • 疾病・傷病者への対応→応急処置、救急対応・搬送

 

また、私たちはすでに病気になっている従業員が、病気を抱えながらでも仕事ができるようにサポートをしています。

 

上記のように業務内容は異なりますが、看護師と比較すると、対象となる人々との関わりが一時的ではなく数年にも及ぶことも大きな違いです。

 

ひとりの保健師の管理下にはそれぞれ800~1000人の従業員がいます。

従業員の出入りはありますが、一般的にはひとつの企業に数十年間勤めることが多いですので、その分、対象と関わる期間はとても長くなります。

 

ですが、その関わり具合は看護師と異なり、密度としてはやや低めです。

看護師は担当患者を受け持つと1日のうち数十分から数時間をその人に割き療養中のサポートを行いますが、保健師が従業員ひとりと関わる時間は平均して年に数十分程度です。

 

もしくは直接関わることなく、顔も見たことのない人も多少います。

ただし、対象者が多いため、日々数名と何らかの関わりを持って仕事をしています。

 

保健室の先生を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思いますが、保健室の先生も全生徒の健康管理に携わりますが、全員の生徒と関わるわけではなく、必要に応じて関わりを持つようになりますよね。

怪我をした時とか。生徒が相談したい時とかだけ。そんなイメージです。

 

保健師は遠隔的なサポートになることが多く、また、予防的な活動になるため、縁の下の力持ち的な立ち位置になります。

しかし、その需要は高まってきており、活躍が求められています。

 

余談

 

保健師になって思うことは、仕事内容が幅広いということです。

患者さんに直接的に関わり、劇的に回復していく様子を間近で見ている看護師と比べると、従業員へそこまで深く関われないのは少し寂しくもありますが、このブログが誰かの目に止まって何かの役にたったら良いなと思うのと同じで、自分が何かをしたことで相手の健康に何らかの良い影響が出れば良いなと思いながら日々仕事をしています。

また、保健室の先生のように、何かあったら駆けこめるような場所にもなりたいと思っています。

 

病院での治療は私たちが投薬する等直接的な関わりが多いですが、保健師は大部分の人とは直接的には関わりません。

その分こちらからのアプローチはとても重要で、特に健康に関する情報提供や教育は必須になります。

いかに相手の心を捉えて行動変容を起こせるかが重要です。

そのためには、やはり私たち産業保健スタッフだけではなく、健康管理に関わる様々な人との連携がとても重要になります。

 

今の日本では、この「従業員の健康」が重視されており、そのために産業保健師の役割が以前よりも重要になっています。

各企業の健康管理活動も盛んになってきていますので、これからより一層活躍できる分野になります。

 

興味のある方は、是非、一緒に産業保健活動を盛り上げていきましょう!