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産業保健師の業務で比重の大きい「5つの健康診断」とは?

2019-04-12

産業保健師の業務の中で、大きな割合を占めるのが、この健康診断に関する業務です。

健康診断って5種類もあるの?何が違うの??

本記事では、こんな疑問にお答えします。

 

関係法規の確認:労働安全衛生法、労働安全衛生規則

労働安全衛生法 

第六十六条

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

引用元: 安全衛生情報センター

 

労働安全衛生規則

第四十四条  事業者は、常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

  一  既往歴及び業務歴の調査

  二 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

  三 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

  四 胸部エックス線検査及び喀(かく)痰(たん)検査

  五 血圧の測定

  六 貧血検査(血色素量及び赤血球数)

七 肝機能検査(血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-GTP))

  八 血中脂質検査(低比重リポ蛋(たん)白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋(たん)白コレストロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査)

  九 血糖検査

  十 尿検査(尿中の糖及び蛋(たん)白の有無)

  十一  心電図検査

2  第一項第三号、第四号、第六号から第九号まで及び第十一号までに掲げる項目については、厚生労働大臣が定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは、省略することができる。

  3  第一項の健康診断は、前条、第四十五条の二又は法第六十六条第二項前段の健康診断を受けた者(前条ただし書に規定する書面を提出した者を含む。)については、当該健康診断の実施の日から一年間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。

4  第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、同項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。

 

健康診断の目的

まず、この健診の目的を押さえておきましょう。

事業者(会社側)の目的…労働者の健康状態を評価して適切な就業上の配慮を行うことができるようにする

労働者(社員側)の目的…自身にとって適切な健康保持増進を行うことができるようにする

つまり、年に一度の健診受診は、会社側にとっても労働者側にとっても、必要とされていることなのです。

 

安全配慮義務と自己保健義務

ここで、もうひとつ法令を確認しましょう。

労働契約法 

第5条

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

労働安全衛生法

第二十六条 

労働者は、事業者が第二十条から第二十五条まで及び前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない。

つまり、事業者は労働者の健康や安全を保持するという「安全配慮義務」が課せられており、労働者は事業社側の講じている対策に応じる「自己保健義務」が課せられています。

健康や安全に関する対策は、会社側と労働者が一体となって行われるべきものになります。

 

健診の種類

健診の種類には、大きく分けて5つあります。

 

雇入時健康診断

労働安全衛生法

第四十三条

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

(項目等以下省略)

常時使用する労働者を雇い入れる際に、実施しなければなりません。

入社3ヵ月前の健診であれば代用OK。

ただし、事業者が労働者へ「入社前に受けてきてください」という指示を出してはいけません。業務違反になります。

 

検査項目

※医師の判断で省略可能なものはナシ!

既往歴・業務歴

自覚症状・他覚症状

身長、体重、腹囲、視力、聴力(オージオメーター1000Hz・4000Hz、30㏈)

CX-P

Bp

貧血検査(RBC・Hb)

肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)

血中脂質検査(LDL、HDL、TG)   

血糖(HbA1cでもOK)

尿検査(尿糖、尿蛋白)

ECG(12誘導)

 

定期健康診断

先述している労働安全衛生規則第44条が示す、年に1回実施すべき健診です。

雇入時健康診断と項目はほぼ同じですが、医師の判断や年齢によって受診義務のないものもあります。

会社にもよりますが、以下の項目が実施されていれば、他の健診でも代用可能です。

 

検査項目

既往歴・業務歴

自覚症状・他覚症状

身長、体重、腹囲(省略OK)、視力、聴力※1(オージオメーター1000Hzは30㏈・4000Hzは40㏈、)

CX-P※2

喀痰検査※3

Bp

貧血検査(RBC・Hb)

肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)

血中脂質検査(LDL、HDL、TG)   

血糖

クレアチニン

 

その他省略基準について

※1:35・40歳は実施。それ以外の45歳未満はオージオ以外でもOK。

※2:20・25・30・35歳は実施。それ以外の40歳未満の者で、感染症に関する法律や塵肺法に該当が無ければ省略OK。

※3:CX-P所見が無く、結核やその他感染症に関する法律・塵肺法に該当しなければ省略OK。

他:貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査は、35歳以外の40歳未満の者は省略OK。

 

特定業務従事者の健康診断

労働安全衛生規則

第四十五条  

事業者は、第十三条第一項第三号に掲げる業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際及び六月以内ごとに一回、定期に、第四十四条第一項各号に掲げる項目について医師による健康診断を行わなければならない。この場合において、同項第四号の項目については、一年以内ごとに一回、定期に、行えば足りるものとする。

2  前項の健康診断(定期のものに限る。)は、前回の健康診断において第四十四条第一項第六号から第九号まで及び第十一号に掲げる項目について健康診断を受けた者については、前項の規定にかかわらず、医師が必要でないと認めるときは、当該項目の全部又は一部を省略して行うことができる。

3  第四十四条第二項及び第三項の規定は、第一項の健康診断について準用する。この場合において、同条第三項中「一年間」とあるのは、「六月間」と読み替えるものとする。

4  第一項の健康診断(定期のものに限る。)の項目のうち第四十四条第一項第三号に掲げる項目(聴力の検査に限る。)は、前回の健康診断において当該項目について健康診断を受けた者又は四十五歳未満の者(三十五歳及び四十歳の者を除く。)については、第一項の規定にかかわらず、医師が適当と認める聴力(千ヘルツ又は四千ヘルツの音に係る聴力を除く。)の検査をもつて代えることができる。

 

以下の特定業務に常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際や業務へ従事し6ヶ月以内ごとに1回、定期に、定期健診と同項目の健診を行う必要があります。

※CX-Pは1年以内に1度受診すればOK。

 

特定業務

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務

ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

ホ 異常気圧下における業務

ヘ さく岩機、鋲(びよう)打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務

ト 重量物の取扱い等重激な業務

チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

リ 坑内における業務

ヌ 深夜業を含む業務(22時~5時の業務が常時ある場合)

ル 水銀、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務

ヲ 鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務

ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務

カ その他厚生労働大臣が定める業務

 

海外派遣労働者の健康診断

労働安全衛生規則

第四十五条の二  

事業者は、労働者を本邦外の地域に六月以上派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者に対し、第四十四条第一項各号に掲げる項目及び厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。

2  事業者は、本邦外の地域に六月以上派遣した労働者を本邦の地域内における業務に就かせるとき(一時的に就かせるときを除く。)は、当該労働者に対し、第四十四条第一項各号に掲げる項目及び厚生労働大臣が定める項目のうち医師が必要であると認める項目について、医師による健康診断を行わなければならない。

3  第一項の健康診断は、第四十三条、第四十四条、前条又は法第六十六条第二項前段の健康診断を受けた者(第四十三条第一項ただし書に規定する書面を提出した者を含む。)については、当該健康診断の実施の日から六月間に限り、その者が受けた当該健康診断の項目に相当する項目を省略して行うことができる。

4  第四十四条第二項の規定は、第一項及び第二項の健康診断について準用する。この場合において、同条第二項中「第四号、第六号から第九号まで及び第十一号まで」とあるのは、「及び第四号」と読み替えるものとする。

 

労働者を6ヶ月以上海外に派遣させる際、そして6ヶ月以上海外に派遣した労働者を帰国させて国内の業務に従事させる際、それぞれについて健康診断を実施しなければなりません。

血液検査やECGは省略できません

また、定期健診の項目に加え、医師が必要と認めた場合には以下の項目が追加されます。

 

追加可能項目

腹部画像検査(胃部レントゲン検査、腹部エコー検査)

尿潜血

HBV抗体

ABO・Rh血液型(派遣前のみ)

検便(帰国後のみ)

 

給食従業員の検便

労働安全衛生規則

第四十七条  

事業者は、事業に附属する食堂又は炊事場における給食の業務に従事する労働者に対し、その雇入れの際又は当該業務への配置替えの際、検便による健康診断を行なわなければならない。

厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルでは、調理従事者等は臨時職員も含め、月に1回以上の検便を受ける必要があるとされています。

検便の検査項目:腸管出血性大腸菌、必要に応じてノロウイルス検査も含む

 

おまけ:労災による二次健診

一次健康診断(直近のもの)の結果、①血圧、②血中脂質検査、③血糖検査、④腹囲またはBMI判定の項目すべてに異常所見が認められ、且つ脳血管疾患または心疾患の症状が無い場合、労働者の請求に基づき、労災保険制度による「二次健康診断等給付」」として「二次健康診断」と「特定保健指導」を無料で受けることができます。

 

最後に

一般健康診断には上記のような種類があります。

事業者はこれらの健康診断を労働者が受けることができるよう、就業規則を作ったり、健康診断を開催したり、もしくは外部で受診後に会社へ結果報告するような体制を整えなければなりません。

産業保健師である私は、この体制の整備にはあまり関与していません。

私の会社の場合では、事務の方々が整備をし、従業員の受診漏れのチェックなどを行っています。

ですが従業員にとっては事務や保健師の仕事の区分けはわかりませんので、こちらにも海外健診の項目についての問い合わせが来たり、逆に、健診結果を確認して受診項目の漏れが無いかをチェックしたりしています。

会社の規則は国の法令の元で作られていますので、まずは大元の法律をしっかりを押さえておきましょう。

 

法令は全て安全衛生情報センターより引用

 

 

  • この記事を書いた人
maki

maki

★看護師から産業保健師へ転職 // 企業所属保健師 // 産業保健や産業保健師、産業保健師への転職情報を発信中。産業保健師への転職を検討されている方を中心に、少しでもお役に立てると嬉しいです。

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