看護師と保健師の違いって何だろう?
このような疑問をお持ちの方はいませんか?
本記事では、看護師と保健師の大きな違いについてお伝えします。
両者において、仕事内容や対象者は大きく異なります。
これらの職、特に保健師を目指す人は、少し見ておくと良いと思います。
産業保健師のお勉強(2)【保健師活動/予防医学の概念】
保健師と看護師の違いを考えてみましょう。
一般的に、保健師は地域、看護師は病院の臨床現場で仕事をしています。
臨床では患者が対象になりますので、疾患に対して適切な治療を行い、機能障害を最低限にとどめ、できる限り早く社会生活に戻ることができるように支援していると思います。
一報、保健師が活動をする地域は、臨床での患者が社会生活を送る場です。
つまり、患者の入院前後の対応や支援を行うのが保健師になります。
そもそも、入院するのは疾患を患うからですよね。
誰も、入院したいと思う人はいません。
保健師は自分が管轄する地域社会で生活するすべての人々を対象として活動をします。
そして、まずは人々の健康を維持・増進したり環境を整えることで、疾病への罹患リスクを下げるところから始まります。
「疾病予防」のための活動としては、その目的や対象となる人などによって大きく3つに分けられています。
ですがこの枠組みはそれほどはっきりした概念ではなく、目安として考えておくと良いと思います。
それでは、その3つに区分された疾病予防にまつわる「予防医学の概念」を簡単にお伝えします。
一次予防では健康増進と罹患率の低下を目指す
一次予防の対象者は全ての人々になります。
健康増進目的として、健康教育や健康相談、栄養相談、環境整備等を実施します。
また、特定の場合にのみ行うこととして、予防接種や化学物質対策等も一次予防に入ります。
まとめると、全ての人々が健康を維持・増進でき、また、生活習慣や生活環境と関連性の高い健康障害の予防をするのが一次予防になります。
ですが、一次予防を積極的に取り組んだとしても、全ての疾病を予防することは困難です。
医療者は健康に関するイベント等を開催したり呼びかけたり、見えない部分で対策を講じたりしていますが、対象者の積極的参加があるかどうかで効果に差が出てしまいます。
インフルエンザや風疹などの予防接種も、勧奨はできますが強制はできません。
つまり、対象者の意識や行動によって大きく左右されてしまいます。
これは後にお伝えする二次予防や三次予防も同様のことが言えます。
よって、三段階で予防措置を設け、いかにすべての人々が健康を維持し、その人らしい生活をおくることができるようにするかという点が、この公衆衛生ではとても重要なのです。
二次予防では有病率と死亡率の低下を目指す
二次予防の対象者も、一次予防と同様に全ての人々になります。
一次予防として健康増進活動や疾病予防活動を展開していても、様々な疾患に罹患する可能性は大いにあります。
たとえ疾患を罹患したとしてもすぐに対処できれば、QOLを維持しやすくなります。
そのため、早期発見・早期治療を目的とした健康診断が有用になります。
また、疾患まではいかないが検査結果があまり良くないといった疾患の前段階の時点で、適切な指導を受け、生活改善をすることで疾病予防につながりますので、医療機関受診による経過観察・指導も重要です。
まとめると、健康診断を開催して受診勧奨を行うこと、結果が悪かった対象者へ適切な対応(医療機関の受診や経過観察措置、生活指導等)を行い、疾病の早期発見・早期治療を行うことが二次予防にあたります。
三次予防では疾患による症状の改善や機能回復、社会復帰を目指す
三次予防の対象者は、疾病罹患後の人々です。
罹患後には適切な治療や管理が必要となりますので、地域保健現場では、疾病の再発や悪化予防のために受診を継続出来ているか、内服管理ができているかを確認したり、仕事復帰後の両立支援、後遺症に対する環境整備など、罹患後にもADLやQOLを維持できるような社会生活を送れるようにすることが大きな目的となります。
もっとも重要なことは一次予防
保健師は全ての人々を対象に活動を行いますので、一人の保健師が担当する対象者数はとても多くなります。
看護師として仕事をする際、臨床では数人~数十人程度ですが、保健師は数百人~数千人を担当します。
そのため、対象者個々への対応は困難であり、いかに効率よく多くの対象者を支援していくかが重要になります。
また、健康増進活動や疾病予防行動を実際に行うのは対象者本人であるため、保健師はそのための動機付けを行うにすぎません。
しかし、この「動機付け」というものは、人間が行動を起こす際に欠かせないものです。
人間は大部分の行動に対して「動機」が必要であり、これまでにしたことがない行動や自分の嫌いな行動をとるためには、その「動機」がとても重要な役割を果たします。
つまり、対象者への「動機付け」がとても重要になるのです。
そのため、上記一~三次予防の中で最も重要になるのは一次予防になります。
全ての人々に対して、生まれたときから一生つづく生活の中で健康獲得のために必要なことを伝えたり与えたりすることで、対象者が個々で必要な対策を自分自身もしくは家族が行うことで、QOLを高めその人らしく生活することができるように支援する必要があります。
個々のニーズは異なりますが、地域性など集団の特徴を把握しながら活動を行うのが、保健師の仕事です。
よって、産業保健師は、その企業に勤める集団の特徴を把握し、特性を生かして、産業保健活動を行っています。