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健康経営の認定基準【基本を押さえるだけ】

2020-05-28

健康経営銘柄って、どういうことをしたら選定されるのかな?

選定された企業はどのようなことをしてるのだろう?

このような疑問を解決したいと思います。

 

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健康経営銘柄・健康経営優良法人の選定基準(大企業向け)

まずは基準についてみて確認してみましょう。

 

選定要件は多くの項目が示されていますが、全てが必須というわけではありません。

ですが、企業として健康経営を推進するには、要件を満たすことを目的にするのではなく労働者の健康増進に向けた活動が必須になりますので、これらの選定要件を参考にしながら、企業内で行うべき取り組みを洗い出してみましょう。

 

それでは、内容を少しずつ、簡単に確認して見ましょう。

 

1 企業理念:健康宣言

【企業理念(経営者の自覚)】

健康宣言の社内外への発信(アニュアルレポートや統合報告書等での発信)

トップランナーとして健康経営の普及に取り組んでいること

 

まずはこれが大切です。要件としても必須ですしね。

経営者が宣言できるかどうかで、企業がどのように舵を切ろうとしているのかがわかると思いますので。

健康経営に向けた取り組みを行いたいと考えている場合には、これをしっかりと押さえてから始めるようにした方が良いと考えます。

 

2 組織体制

経営層の体制:健康づくり責任者が役員以上

保険者との連携:健保等保険者と連携

 

こちらは、大きな企業であれば自ずとそうなっているように思います。

これから体制を作り取り組みを始めるのであれば、組織の責任者を役員レベルの方にする等調整が必要です。

健保との連携についてですが、「コラボヘルス」が重要視されていたり特定保健指導などで協力することもありますし、また、健保が持つデータは大きく有用なものが多いですので、積極的に連携を図って健康施策を進められると良いと思います。

 

3 制度・政策実行 

「制度・政策実行」の項目については、15項目のうち12項目以上を満たすことが必要です。

【従業員の健康課題の把握と必要な対策の検討】

A 健康課題の把握

1)定期健診受診率(実質100%)

2)受診勧奨の取り組み

3)50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施

B 対策の検討

4)健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定

 

1)定期健診受診率

定期健診は法令で定められているものですので、100%の受診率でない場合には、健康経営云々よりも先にこの割合を高められるように計らっていきましょう。

 

2)受診勧奨

定期健診の受診率が100%に達した後は、その結果のフォローが重要です。(もちろん100%に達していなくても重要です)

結果票には、「問題なし」や「要受診」等、医療機関に応じて様々な様式で結果が出ていると思います。

この「要受診」といった受診や再検査を行うべきという結果が出ていた場合には、個人へ受診勧奨を行うことが大切です。

これは検診事後措置である保健指導でも行うことになりますが、勧奨の有無で受診率は変わりますので、可能な限り勧奨して健診よりもさらに詳細な検査等を受けられるように伝えられると良いです。

 

3)50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施

常時5使用する労働者が50人未満の事業場の場合には、ストレスチェックの実施は当分の間は努力義務とされています。

しかし近年では労働者のメンタルヘルスに関する対策が重要となってきていることもあり、可能な限りストレスチェックを実施し、少しでも早くメンタルヘルス不調者をフォローしたり、職場環境を整備することが求められています。

そのため、この項目では法令では義務化されていない小規模事業場でもストレスチェックを行うことが求められています。

 

4)具体的目標(計画)の設定

何に関しても同じだと思いますが、取り組みを行うにあたり計画は重要です。

最初は問題点や課題を探すところから始まると思いますが、いつ何を行うのか、目標・指標はどの程度かなど、具体的な取り組み内容を考えておきましょう。

目標や指標が設定されていないと、それを計測するための手段(アンケートなど)を忘れてしまったり、評価ができずその後の改善まで結びつきにくくなってしまいます。

PDCAをうまく回していくためにも、しっかりと設計しておきましょう。

 

【健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりとワークエンゲイジメント】

C ヘルスリテラシーの向上

5)管理職または従業員に対する教育機会の設定

D ワークライフバランスの推進

6)適切な働き方実現に向けた取り組み

E 職場の活性化

7)コミュニケーションの促進に向けた取り組み

F 病気の治療と仕事の両立支援

8)病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み(15を除く)

 

5)管理職または従業員に対する教育機会の設定

労働者が健康を保持・増進するためには、個々人のヘルスリテラシーの向上が重要です。

今はインターネットで何でも調べられるようになりましたが、その情報が正しいか否かの判断が難しくなっています。

可能であれば専門家を通して従業員へ発信を行うと、正しい情報を与えることができますし、説得力が増して効果的です。

健康経営は会社側が一方的に行っても従業員はついて来れませんので、健康経営の意味や取り組む理由への理解を得るとともに、個人が組織の一員として自発的に動くことができるように動機付けられる教育の機会があると良いと思います。

 

6)適切な働き方実現に向けた取り組み

「働き方改革」が話題になっていました。この項目はそれに関係しています。

新型コロナウイルス感染症とともに、テレワークが導入された企業は多いと思います。

働き方について見直す良い機会になったのではないでしょうか。

労働者は色々なことを抱えながら生活しています。

高齢社会ですので、介護者を兼任しなければならない労働者も増えてくるでしょう。

従業員が働きやすい環境を作りあげられるよう、様々な制度やツールを活用できると良いと思います。

 

7)コミュニケーションの促進に向けた取り組み

組織の活性化は生産性を増加させ、企業の利益率上昇につながることがわかっています。

また、組織内コミュニケーションが増すことによって従属意識も強まり、離職率の低下にも繋がるのではないでしょうか。

コミュニケーションの促進に向けた取り組みとしては、デジタルツールの活用から、グループでの運動機会の設定など、様々な方法があると思います。

どのような場でのコミュニケーションを増やすべきなのか、、、または現在抱えている問題点から解決できるように考えていくこともひとつです。

 

8)病気の治療と仕事の両立の促進に向けた取り組み

加齢によって疾病リスクは自然と高くなりますが、年齢問わず罹患しても治療しながら働き続けられるよう、会社の支援が必要です。

働き方改革にも関係しています。

また、厚労省からガイドラインも出ていますのでご参考まで。

厚労省HPへ

 

従業員の心と体の健康づくりに向けた具体的対策

G 保健指導

9)保健指導の実施および特定保健指導実施機会の提供に関する取り組み

H 健康増進・生活習慣病予防対策

10)食生活の改善に向けた取り組み

11)運動機会の増進に向けた取り組み

12)女性の健康保持・増進に向けた取り組み

I 感染症予防対策

13)従業員の感染症予防に向けた取り組み

J 過重労働対策

14)長時間労働者への対応に関する取り組み

K メンタルヘルス対策

15)メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み

L 受動喫煙対策

受動喫煙対策に関する取り組み

 

9)保健指導・特定保健指導

2)の受診勧奨とも多少関わりますが、健診事後措置としての保健指導は重要です。

多くの従業員は「健診を受ければ良い」と思っています。

「受けるだけで良い」と思っているのです。

ですが、健康診断はただ受けるだけでは意味が無く、その結果を確認し、それに基づく行動変容を行わなければ意味がありません。

ただ、健康診断結果は医療機関によっては簡潔に記載されていたり専門用語が使われているなど、一般の方が見てもよくわからないような表現になっていることも多いです。

そのため、結果についてのフィードバックをしっかりと行い、より健康状態を良くするためにはどのようにすべきかを専門家からアドバイスすることが重要です。

特定保健指導はまた少し違った基準で行われるものですが、自社で全てを実施することが困難な場合には健保等へ協力要請しても良いのではないでしょうか。

また外部委託サービスもありますので、そういったサービスを活用するのもひとつです。

 

10)食生活の改善に向けた取り組み

健康に大きく関わる要員のひとつである食事ですが、この部分へアプローチすることは健康施策としてとても有効です。

特に大きな企業の場合には社内に食堂を抱えているケースも多く、そういった場合には食堂と連携して「ヘルシーランチ」のような物を提供するのもひとつの方法です。

また、社内に食堂が無い場合でも、ヘルシーランチサービスを提供している業者は多いので、そういったサービスを活用することも可能でしょう。

もちろん、ポピュレーションアプローチとして、食事に関する教育を行うことも基本施策となるでしょう。

 

11)運動機会の増進に向けた取り組み

運動は「ダイエット」といった身体面への良い影響のみならず、「気分転換」「疲労回復」といった精神面への良い影響をも持ち合わせています。

多くの企業がウォーキングイベントや運動会を企画し、運動の機会とコミュニケーションの機会を同時に取り入れています。

運動と言うと身体面への影響だけを考えがちですが、多くの面でメリットがありますので、積極的に取り入れてみることをオススメします。

大きなイベントを開催しなくとも、「ヨガ教室」や「ストレッチの機会」を取り入れるだけでも効果的です。

 

12)女性の健康保持・増進に向けた取り組み

展開が難しいもののひとつが、この項目だと思います。

会社の中ではまだまだ男性社員が優位である企業が少なくありません。

ですが、別記事でお伝えしたように、生産年齢人口を増やすためには、働ける世代が働きやすい環境を整備する必要があり、そのためには結婚・妊娠・出産しても女性が働き続けられるような環境が求められます。

男性が優位である企業ほどこの施策は進めづらいと思いますが、女性の社会進出が当たり前になっており、新入社員でも女性の希望者が多くなってきていると思いますので、男女という括りで考えず、ダイバーシティの考え方をもって社内制度を見直し始めることは企業成長に繋がっていくと思います。

こちらも働き方改革のひとつとなりますので、重要ですね。

 

13)従業員の感染症予防に向けた取り組み

2020年は新型コロナウイルス感染症のため、世界的に感染症予防への取り組みに注目が集まり、各企業でも工夫して取り組まれたことと思います。

ですが、感染症は常時注意すべき事項のひとつです。

以前から進められていますが、風疹対策もそのひとつです。

感染症はその経路を塞いだり抗体を獲得することによって、「予防」ができるものです。

新型コロナウイルス感染症はワクチンが無いために大きな問題となりましたが、罹患すると問題となり得る感染症に関しては既にワクチンができています。

そのワクチンがあるおかげで蔓延まではしていないものの、ワクチンがあるにもかかわらず罹患して問題が生じてしまうケースが少なくありません。

抗体は一度獲得できれば半永久的にその効果が持続しますので、感染症への理解と対策を進め、防ぐことのできる病気は確実に予防していきたいところです。

 

14)長時間労働者への対応に関する取り組み

働き方改革法案でも長時間労働者対策が盛り込まれているように、労働者の時間管理はとても厳しくなってきています。

残業が多くなることにより疲労が増えるのはもちろんですが、仕事の時間が増すことで自分の時間が減ります。

つまり、残業の増加とともに睡眠時間が減少する傾向になっています。

睡眠時間の減少によって心身の機能回復が不十分になってしまいますので、事故の原因になったり、メンタル面の不調や生産性の低下等、あらゆる側面へ影響を及ぼします。

事業者として従業員の勤務計画・時間管理は重要事項のひとつです。

 

15)メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み

メンタルヘルス不調者への対応に関しては、多くの企業が既に取り組まれていると思います。

ストレスチェックが義務化されたこともあり、その背景にも注目が集まったことでしょう。

また、メンタルヘルス不調者を抱えている企業は、その対応に頭を悩ませているかもしれません。

メンタルヘルス不調者へどのような対応をするのかも重要ですが、なぜメンタルヘルス不調になってしまったのか、職場に要因があったのかを考えていくことが重要です。

不調に陥った個人の基質を原因と考えるのは簡単ですが、それでは職場風土は改善しません。

個人の基質と同時に職場環境にも目を向け、対策を考えていくことができると、より風通しの良い企業になりそうです。

 

受動喫煙対策に関する取り組み

こちらの項目は必須要件となっています。

2020年4月より改正健康増進法が全面施行となりました。

これによって「望まない受動喫煙」に対する対策がより強化されています。

義務化されたため、企業では既に環境整備が済んでいると思いますが、従業員への教育や情報提供もしっかりと行っていきましょう。

 

【取り組みの質の確保】産業医や保健師を巻き込む

M 専門資格者の関与

産業医または保健師が健康保持・増進の立案・検討に関与

 

こちらも必須要件となっていますが、健康経営を進める上で、専門家の意見は重要です。

経営的な観点は乏しいですが、どういった健康施策を行うと期待する結果が得られるのか、そのためには具体的にどのような取り組みが効果的なのかといった行動レベルの施策については、専門家の意見をぜひ取り入れましょう。

上記15項目の施策について、専門家は多くの情報を持っています。

健康経営銘柄を取得している多くの企業では、産業保健スタッフとともに施策を進めています。

企業に配置していない場合には、外部から派遣を依頼するなど、積極的に活用していただきたいものです。

 

4 評価・改善

取り組みの効果検証:健康保持・増進を目的とした導入施策への効果検証を実施

 

目標設定の項目でもお伝えしましたが、PDCAサイクルを回ることがとても重要視されています。

実際に改善すべき項目があった際、それに対する取り組み結果のデータと評価、その後の改善案、そしてさらにPDCAを回していくという過程が大切です。

 

5 法令遵守・リスクマネジメント

定期健診の実施、健保等保険者による特定健康診査・特定保健指導の実施、50人以上の事業場におけるストレスチェックの実施、従業員の健康管理に関連する法令について重大な違反をしていないこと、など

 

上記の項目でもお伝えしてきましたが、既に法令で定められ義務化されている内容も多く含まれています。

まずは最低限それらの基準を満たさなければなりません。

 

近年変更されたポイント

2019年まではウエイトが①:②:③:④=3:2:でした。つまり、③制度・施策実行と比べて④評価・改善が重視されるように変更されたことになります。

健康施策に関するPDCAサイクルや、その中でも評価改善を重要視されています。

また、経年での変化や成果を社外へ発信しているかどうかもポイントのようです。

出典・引用:経産省HP健康経営銘柄選定企業紹介レポートより

 

まとめ

長くなりましたが、選定要件について簡単にご紹介しました。

各施策についてはとても重要ですので、健康経営銘柄等を意識せずともぜひ企業には取り組んでいただきたい事項です。

産業保健スタッフとしてもこれらの知識を兼ね備えて置く必要がありますので、また別でお伝えできればと思います。