基本

産業保健師が最初に学ぶべきこと【オススメの本もご紹介】

2020-05-30

産業保健師になったは良いものの、あまり知識がないので困る・・・

知っておいた方が良いことって何かあるのかな?

 

こんな疑問を解決したいと思います。

 

産業保健師の専門性とは何か?

当たり前のことかもしれませんが、産業保健師は「産業保健」という分野に携わります。

この産業保健分野についてですが、保健師になるまでの過程で深く学ぶ機会は少なかったと思います。

少なくとも私の頃はそうでしたし、今でもまだ「産業保健」に特化した授業は少ないようです。

看護師が病院で、保健師が行政で実習をするのは当たり前になっている中、保健師を目指す過程の中で企業で実習をする学校はまだまだ多くありません。

 

法律の話になりますが、産業医はその役割や必要となる場所が定められている一方、産業保健師は定めがありません。

そういった背景も、学ぶ機会が少なくなってしまうことの要因のひとつかもしれません。

産業保健師も法制化できるよう先輩保健師の方々は頑張ってくださっていますが、今現在はまだ叶っていません。

 

まだまだマイナーな産業保健師ですが、このような中でも産業保健師になりたいと考える方がいるのは事実ですし、実際に希望が叶って就職・転職ができた方もたくさんいます。

ですが、学びが少ない背景の中で仕事を始めると、大部分の人は悩みを抱えることになります。

 

最初はその会社の業務を覚えることに必死になりながら日々を過ごします。

しかし、そういった業務に慣れてくると、ふとこんな風に思うことがあるかもしれません。

 「産業保健師としての仕事や役割って何だろう」

 「これって産業保健師の仕事なのかな」

 「産業保健師の専門性って何だろう」

このように考え始めると、産業保健について深く学ぶ機会が無かった私たちは、どんどん深みにハマってしまうかもしれません。

 

専門性ついて考える前に、まずは基本的な「産業保健とは何か」を押さえておきましょう。

 

産業保健の全体像を把握する

産業保健は、会社の従業員が安全に、健康に、安心して働くことができるように支援する活動全般を指します。

 

このために必要なことは、

・従業員が自らの安全と健康を保持・増進できるように支援すること

・企業が従業員の安全と健康を保持・増進できるように支援すること

になります。

つまり、従業員個人に対する支援と、企業が行う産業保健活動を支援することの両方が必要になります。

 

従業員に対する支援となると、例としては

・健康診断の事後措置

・ストレスチェック後対応

・メンタルヘルス対策

といったことが挙げられますし、企業の活動支援となると、

・労働安全衛生教育

・安全衛生委員会

・感染症予防対策

・健康経営

といった内容の活動が挙げられます。

 

例として挙げただけですが、その内容の分野が多岐にわたることがわかると思います。

これらをすぐに理解し実践することは難しいかもしれませんが、全体的にざっと知っておくだけでも産業保健の全容を知ることができるため、自身の活動へ役立つと思います。

 

ですが、分野ごとのセミナーで苦手なところやわからないところを埋められるように各種の研修はあるものの、これら全てを一度に学ぶことのできる研修はありません。

ですが、産業保健全般をわかりやすく学ぶことのできる、産業保健のバイブル的な本があるのでご紹介します。

 

「職場の健康がみえる」

私がオススメする本は、「職場の健康がみえる」という本です。

これは、産業保健とはどのようなことなのか、全体像を把握するにはとても良い本です。

このシリーズは、看護師出身の方はよくご存知なのではないでしょうか。

そう、「病気がみえる」シリーズのうちのひとつです。

全編カラーでイラスト付き、とても見やすくて使いやすい本ですよね。

この産業保健バージョンの本が2019年の年末に出版されました。

そして産業保健業界では、この本の出版は大きなニュースになりました。

まさかの「病気がみえる」シリーズに加わったことも驚きでしたが、執筆されている方々は産業保健業界では有名な方ばかりですし、何より「産業保健の本」が出されたことが私たちにとっては大きな喜びでした。

産業保健師はもとより、産業保健という分野もまだまだマイナーな分野のひとつですので、そういった分野の本を出してくださることはとてもありがたいです。

 

産業保健や産業保健師について学びを深めたいという方は、ぜひ手にとってみていただきたいです。

先にお伝えしたように、産業保健の関わる内容はとても幅広い分野になります。

もちろん、会社によって求められる知識やスキルは異なると思いますが、産業保健師という専門職としては産業保健全般について把握し、幅広い視点で物事を考えられるようにすると良いと思っています。

そのため、こういった産業保健全般について触れることのできる本を活用して産業保健師としてのレベルアップに励んでいただけたら嬉しいです。

 

ちなみに、残念ながらあまり書店では見かけません。

色々な書店へ行くたびにこの本を探すのですが、まだまだマイナー分野のためか、なかなか置いてあるお店はありません。

そもそも書店では産業保健の本自体が少ないですし、やはり求める人が少ないことは事実のようです。

この本がどの書店でも見かけられるくらい、早く産業保健が世に広まって欲しいなと思います。

 

産業医の役割を理解する

産業保健に関する全般が何となく見えてきたら、次は産業医の役割について知っておきましょう。

 

ここで、病院を想像してみてください。

医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士など、多くの職種がそれぞれの専門性を発揮しながらチームで取り組みながら患者を支援していますよね。

産業保健も同様で、チームで取り組むものです。

産業医、産業保健師、人事労務担当者、衛生管理者、心理士、事業者など、産業保健に関わる職種は様々です。

しかし、ひとつ病院と異なることがあります。

病院では患者の治療に向けて「医師」がトップの司令塔となって周りの職種が動いていたと思います。

一方で産業保健では「産業医」は必ずしもトップには立ちません。

もちろん、そういった役割を求められる場合もあると思いますが、病院とは少し異なるでしょう。

 

私もそうですが、看護師から産業保健師へ転職すると、この考え方の転換が難しい場合があります。

病院では医師の指示に基づいて看護師は業務にあたりましたが、産業保健の世界ではそうではありません。

産業医の指示を求めることもありますが、それが全てではなく、保健師自身が自ら判断して動くことも多々あります。

産業医が指示を出してくれると思って待っていると、なかなか産業保健師としての活動は進まないと思います。

 

また、多くの企業では、産業保健師は産業医の活動を補佐する役割をも担っています。

これは産業医のパートナー的存在として活動するイメージです。

一定以上の規模になった企業は産業医を選任する義務がありますが、産業医を雇うには多額の費用が必要ですので、大部分の企業は月に数回来て業務をしていただくような契約を結んでいます。

そういった場合、普段は産業医がいない中で保健師は活動することになりますので産業医的視点も必要になりますし、限られた時間で産業医が業務を行うにあたり、円滑に効率良く進められるようサポートを行うことも重要になります。

 

産業保健について学ぶ機会の少なかった方は、もちろん産業医についてもあまりよく知らないと思います。

こういった観点から、産業保健に携わる者として、産業医の役割や業務内容についてを理解しておくことも大切だと思っています。

 

法令には産業医の業務が記してありますが、企業内での産業医活動もまた多種の分野に渡ります。

産業保健師と産業医は異なる職種なので、理解を深める必要は無いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、産業医の活動について少し深く理解しておくことができると、きっと産業保健師としての活動にもプラスに活きると思います。

そこで、またひとつ本をご紹介します。

 

「産業医 はじめの一歩」

こちらは産業医である方が執筆された、産業医活動を初めて行う方にとってのバイブル的な本になります。

 

「産業医による産業医のための本」なのですが、タイトルからもわかるように、ベテラン産業医への本ではなく産業医初心者の方向けの本です。

産業保健師も企業で仕事をするため「ビジネスマナー」が求められますが、産業医も同様ですよね。

そのため、この本ではビジネスマナーについても触れられています。

職場の面接のポイントまで記されており、とても親切な本です。

 

そして、私のような産業保健師にとってもすごくわかりやすく書かれていますし、保健師としても学びを多く得られる本です。

この本を読むことで、産業医が何を意識して活動すべきなのかを理解することができます。

産業医の考えることがわかると、保健師として動きやすいですよね。

また、企業側が産業医について深く理解していない場合でも、保健師から産業医や産業医の業務についてをお伝えできると思います。

産業保健師としての意識にも活動にもプラスになる本だと思っています。

 

多くの引き出しを持っておく

産業保健全般について知り、産業医の役割について把握できたところで、産業保健師の役割について考えてみましょう。

 

産業保健師は、産業医よりも多く従業員や産業保健関連スタッフと関わる機会や時間が多いと思います。

また、産業医と同等の個人情報を取り扱いますので、プライバシーへの配慮も必要になります。

そういった情報の取り扱いに注意しながら、企業側の支援も行わなければなりません。

 

産業保健が関わる分野が多岐に渡るように、産業保健師が関わるべき分野も同様に多岐に渡ります。

しかし、産業保健師がやりたいように活動できるかというとそうではなく、企業が何を求めているのか、何に比重を置きたいと思っているのかによっても、活動内容は変わってきます。

求められていることを満たしながら、時を見て新しいことを提案するなど、活動のタイミングも重要です。

従業員への支援も重要ですし、企業の対策への支援も重要です。

最近始まった新型コロナウイルス感染症やテレワークに対する課題や対策にも、産業保健師として関わる必要があるでしょう。

 

このため「産業保健師の役割はコレ」というように、具体的なことを一言では言えないのですが、産業保健師として兼ね備えておくべき知識やスキルはたくさんあるということを理解しておいていただけると良いと思います。

従業員や企業から助けを求められたときにすぐに対応できるよう、多くの引き出しを持っておくことも重要です。

また、ひとつの産業保健活動を行うにあたり多くの職種との連携も必要となりますが、保健師がその連携の要になることもポイントかと思います。

コレは看護師の専門性と重なるところではありますが、多くの職種と協働しうまく連携を計らいながら進めることができるのは、産業保健師の専門性のひとつと言えるのでは無いでしょうか。

 

「産業看護学」

産業保健師としての本も一冊ご紹介します。

河野啓子先生が執筆されているのですが、こちらの方をご存知でしょうか。

産業看護の草分け的存在であり、現在もご活躍されている方です。

産業保健の歴史から、産業保健の各分野でどのような役割があるのかを詳細に記してくださっています。

基本的概念として押さえてお句ことができると、実際の業務でも活かせるのではないでしょうか。

 

終わりに

個人的な経験と考えから色々と書いて見ましたが、産業保健師という、まだまだマイナーで少ない職種として自分なりの価値を見出しながら仕事を行うことは、簡単ではありません。

ですが、やりがいを見つけられると楽しく感じられるものです。

少しずつ自分の知識や技術の幅を広げながら、産業保健を楽しみつつ仕事を進めていくことが私の理想です。

同じような方がいらっしゃいましたら、今回の記事を参考にしていただけると嬉しいです。

 

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