働き方改革って具体的にどんな内容なんだろう
と思っていませんか?
本記事では、2019年4月1日に施行される「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(通称:働き方改革関連法)」について説明します。
産業保健に携わる者としては把握しておかなければならない法律です。
簡単にまとめると、以下のようになります。
働き方改革関連法
「働き方改革」は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」といった日本が直面している課題を解決するため、働く人々の個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会を実現するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保のための措置を講じ、働く人々の一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
また、この法律は、簡潔的には下記法律の改正をまとめたものになります。
ポイント
・雇用対策法
・労働基準法、労働安全衛生法
・労働時間等設定改善法
・じん肺法
・パートタイム労働法(パート法)
・労働契約法
・労働者派遣法の労働法
それでは、内容を詳しく見ていきましょう。
働き方改革の総合的かつ継続な推進(雇用対策法の改正)
働き方改革にかかる基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」(閣議決定)を定める。
・法律の題名:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律
・国は、労働者の多様な事情に応じた「職業生活の充実」に対応し、働き方改革を総合的に推進するために必要な施策として、現行の雇用関係の施策に加え、次のような施策を新たに規定。
①労働時間の短縮その他の労働条件の改善
②雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保
③多様な就業形態の普及
④仕事と生活(育児、介護、治療)の両立
・事業主の役割の重要性に鑑み、その責務に、「職業生活の充実」に対応したものを加える。
①労働者の労働時間の短縮その他の労働条件の改善など、労働者が生活との調和を保ちつつ意欲と能力に応じて就業できる環境の整備に努めなければならない。
長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
1.労働時間に関する制度の見直し(労働基準法、労働安全衛生法)
(1)長時間労働の是正
①時間外労働の上限規制の導入
・時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定。
②中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し(H27年法案と同内容)
・月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止。(H35年4月1日施行)
③一定日数の年次有給休暇の確実な取得
・使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない。(労働者の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はない)。
④労働時間の状況の把握の実効性確保
・労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければならない。(労働安全衛生法改正)
(2)多様で柔軟な働き方の実現
①フレックスタイム制の見直し
・フレックスタイム制の「清算期間」の上限を1か月から3か月に延長。
②特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
・職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事する場合に、年間104日の休日を確実に取得させること等の健康確保措置を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の規定を適用除外とする。
→健康確保措置として、年間104日の休日確保措置を義務化。加えて、①インターバル措置、②1月又は3月の在社時間等の上限措置、③2週間連続の休日確保措置、④臨時の健康診断のいずれかの措置の実施を義務化(選択的措置)。
・また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならない。(※労働安全衛生法の改正)
・対象労働者の同意の撤回に関する手続を労使委員会の決議事項とする。
2.勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
(1)勤務間インターバル制度の普及促進
事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければならない。
(2)企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進
企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組を促進するため、企業全体を通じて一の労働時間等設定改善企業委員会の決議をもって、年次有給休暇の計画的付与等に係る労使協定に代えることができる。
(3)事業主の責務として、短納期発注や発注の内容の頻繁な変更を行わないよう配慮するよう努める。
3.産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)
(1)事業者は、衛生委員会に対し、産業医が行った労働者の健康管理等に関する勧告の内容等を報告しなければならない。(産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場)等
(2)事業者は、産業医に対し産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければならない。(産業医の選任義務のある労働者数50人以上の事業場)等
・事業者から、産業医に対しその業務を適切に行うために必要な情報を提供することとするなど、産業医・産業保健機能の強化を図る。
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の実効ある是正を図る。
1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
(1)短時間・有期雇用労働者に関する同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止に関し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化。
(2)有期雇用労働者について、正規雇用労働者と①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇の確保を義務化。
(3)派遣労働者について、①派遣先の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種業務の一般の労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金である等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することを義務化。
(4)これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備。
2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化。
3.行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備
1の義務や2の説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADRを整備。
最後に
働き方改革は、雇用の7割を担う中小企業・小規模事業者において、着実に実施することが必要です。
魅力ある職場とすることで人手不足の解消につながり、その結果、企業の生産性の向上に繋がります。
このプラスのサイクルを目指し、この法案は制定されています。