振り返り 産業保健師の日常

看護師や保健師の専門性とは何か(2)

2019-07-02

 

前回の続きです。

前回の内容
看護師や保健師(看護職)の専門性とは何か(1)

医療業界にはたくさんの専門職が存在しており、一人の患者、対象者に対して多くの専門職が関わっています。 その数ある専門職の中に看護師や保健師も含まれるわけですが、看護師や保健師だけにしかできないことは何 ...

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今、看護師や保健師の専門性について考えているところです。

 

看護師と他の医療職

看護師や保健師って、自分が主役になるような仕事の仕方をあまりしないように思います。

前回もお伝えしましたが、医療業界には様々な専門職おり、専門性を発揮して患者さんの治療やサポートにあたっています。

病院を例に考えてみましょう。

・医師

・看護師

・薬剤師

・介護士

・理学療法士

・作業療法士

・言語聴覚士

・臨床検査技師

・放射線技師

・臨床工学技士

・管理栄養士

・看護助手

・医療事務

 

ざっと挙げてみても、10種以上の職種を挙げることができます。

さて、これらすべての職種と関わっている職種は何だと思いますか?

そうです。看護師です。

もちろん、医師のリーダーシップの下、コメディカルがその治療方針に沿って患者の支援にあたるわけですが、医師が看護助手と関わることは少なさそうではありませんか?

ですが、看護師はすべての職種と関わるんです。

 

看護師は他職種と常に連携を図っている

 

看護師の仕事についてですが、

医師の指示を受ける

他の看護師を仕事をする

薬剤師の支援のもと薬剤の準備をしたり患者への説明を行う

介護士とともに患者搬送をする

理学療法士とともに患者のリハビリをする

 

などなど、ともに仕事を行ったり、指示を受けたり指示を伝えたり、とにかく日々様々な職種と共同して患者の支援にあたっています。

そう、つまり、他職種との連携を常に行いながら仕事をしているのです。

当たり前だと思ってませんか?

まぁ、看護師の仕事をするためには当たり前になるのですが、他職種から見れば、貴重な存在になるのだと思います。

だって、薬剤師と放射線技師とか、関わることが無さそうですよね。

複数の職種と関わることはあっても、看護師のように全職種とともに仕事を行うことは無いと思います。

これが何を意味するかというと、看護師は全職種の専門性を理解し、それらの専門性を発揮できるように最大限専門職のサポートを行っているということです。

つまり、患者の支援もするし、他職種の支援もする

時には、他職種同士が連携を図れるように仲介人になったり

看護師は常に視野を広く持ち、全体を見ながら仕事を行うエキスパートなのでは無いかと思います。

看護師としての仕事が十分できるよう、また、他職種が各専門性を発揮できるよう、常に複数の職種と連携を図り、相乗効果を生み出しながら業務を行なっているのが看護師です。

 

看護師は患者の全てを捉えようとする

別の視点から考えてみましょう。

各専門職は、患者をどのように捉えているのでしょうか。

医師は患者の病気を主に見ており、薬剤師は患者の治療のために使用されている薬剤を見ています。

理学療法士は患者のバイタルサインや治療状況、患者の身体機能を見ながらリハビリにあたります。

管理栄養士は患者の食事や栄養状態を見ます。

全てに共通するのは、医師の指示の下で仕事を行うことですが、患者の体や治療を見ているのもおそらく共通しているのではないかと思います。

一方、看護師はどうでしょう。

私は看護学校ではヘンダーソンの理論の下で患者のアセスメントを行なってきましたが、ヘンダーソンでは14もの項目から患者を捉えようとしています。

呼吸

飲食

排泄 

姿勢 

睡眠・休息 

衣類 

体温 

清潔

環境

コミュニケーション

信仰

達成感

レクリエーション

学習

 

こんなに多くの視点から患者を理解しようとしているのです。

同じように考える職種は他にあるでしょうか?

もしかしたらあるのかもしれませんが、もちろん、おそらく医師はそうなのかもしれません。

ですが、おそらく医師よりも患者のあらゆることを理解しようと努める訓練をしてきたはずです。

他の職種も、患者の全てについて理解する訓練はおそらくしていないでしょう。

各専門職の専門性を発揮するために関わる情報を収集するにとどまり、まして信仰やレクリエーションといった細かい情報まで収集するには至らないでしょう。

つまり、患者が生きてきた過去・現在・未来、それらに関わるありとあらゆるものを全て含めて包括的に考えていくことができる、それができるように訓練を受けてきているのが唯一、看護師なのではないかと思います。

 

看護の持つ力は保健師としても同様に役に立つ

私は少し前まで、

看護師は医師のように医学に長けているわけではないし、薬剤師のように薬学に長けているわけでもない。

その他の専門職のように、専門分野に長けているわけではない。

看護師の専門って一体何なんだろう、そう思っていました。

「看護学」を専門にしている、そう言ってしまえばそうなのですが、「看護学」というものがあまりに一般の人にはわかりづらいもので、抽象的なものであるように感じていました。

自分は胸を張って看護師をしてきたけれど、看護師としての専門性を発揮できたのだろうか、と。

でも、周囲のアドバイスのおかげで、少しずつ理解できてきているところです。

看護師の専門性、やはり抽象的な部分がとても多いのですが、少なくとも上記の「連携」と「患者の全体像のアセスメント」という部分は、他職種より得意なのではないか、と思えるようになりました。

今は保健師として仕事をしていますが、この看護の専門性は保健師の専門性としても同じです。

保健師として、企業でも行政でも、様々な職種と連携して業務を行なっています。

連携無しには、逆に保健師としての専門性を発揮できないでしょう。

また、地域住民や会社の従業員のことを考えるときも、問題点の周りに潜むあらゆる点に目を向け考えていくことができます。

 

看護師の持つ専門性は、生活を豊かにする可能性がある

そういった専門性は、実は普段の生活の中でもとても有用です。

人は一人では生きていけません。

必要な時に必要な人と繋がって生きていくものです。

また、大切な人を支えるためにあらゆる視点から考えることが必要になりますが、そういった時にも役立つでしょう。

長くなりましたが、看護師として、保健師としての専門性、少しはご理解いただけたでしょうか。

何気なく行なっている日々の業務の中にも、大切な専門性が存在しています。

それを意識するだけでも、看護の仕事が少し楽しくなるかもしれませんね。